エネルギー政策のこれから

前置き

私はエネルギー政策の専門家ではない。
だが、これからのことは国民一人一人が考えていく必要があると思っている。
そして、そのためにまずは自分の意見を述べるところから始める次第である。


建設的な意見が活発になり、より良い未来を目指していければと幸いである。

電力量の確保

エネルギー政策として最大の関心事は原発のこれからであろう。
だが、原発の是非を問う前に、まず前提をはっきりさせないといけない。


夏場にはピーク時に6000万kWに達すると言われる電力消費量。
これからも維持していくのか。
それとも電気自体も使用しない生活にしていくべきなのか。


これに対しては、感情においても論理においても電気量の維持を訴えたい。
まずはその点を述べる。


○論理
日本には、IT業界なども然ることながら、製造業に従事する人は多い。
原発が作っていた電気を捨てるとなると、製造に使用する電力は到底間に合わない。
大幅な電気料金の値上げが発生し、弱小企業は倒産し、家庭でもエアコンなどの消費電力が多い家電は使われなくなり、経済が衰退していくことが予想される。
ない袖は振れないのだから。


適当な推論ではあるが、原発の代替施設を用意しない場合には、おそらく昭和40年くらいの生活水準に戻す必要があるだろう。
しかし、PCも携帯電話(基地局が維持できないだろうからね)も存在しない生活は私には有り得ない。


○感情
今回の震災にて、台湾、アメリカ、タイなど各国から義援金が届いている。
普段、一部のネット住人に敵視されがちな中国、韓国、ロシアなども勿論支援を表明している。
これはとてもとてもありがたいことである。Pray for Japanの運動には感動を覚えた。


多くの国が日本を支援してくれている現状がここにある。
この中でその温情だけを受けて、受け続け、乞い続けて、日本が衰退していっていいだろうか。


私はそうは思わない。


受けた恩は忘れたくない。
必ずや復興して、あなた方のお蔭で立ち直ることができたんだと胸を張りたい。
そして、何かの折に支援してくれた各国に今日のお返しをしたい。


日本が復興するためには、経済を回していくしかない。
そして製造業などの技術立国日本にとって、電力は復興の礎ともいえる。


また、世界の製品で日本の部品を使用しているメーカーは多い。
そういったメーカーに質の高い製品を届けるためにも必ず復興しよう。


だから、電気量は今までの量を維持していく必要があると考える。
故に、原発を廃止する場合でも、原発の代替となるエネルギー源は絶対に確保する必要があると主張したい。


実際、原発の是非を問わず、電気の維持は大多数の意見だと思っている。
だが、一部には電力、経済活動の縮小を唱える人もいる。
ゆえに、まずは前提を述べるところから始めさせていただいた。

原発の是非

原発鶏肋である。そう考えている。


捨てるのには惜しい。余りにも惜しい物である。
だが、もう一旦捨てるしかないのだろう。
そう思っている。


特に福島第一原発など、しゃぶりつくした鶏肋だっただろう。
味など殆ど残っていなかったにも関わらず、彼らは骨までしゃぶり尽くす気でいたに違いない。
そして絞りかすで火傷を負う羽目になったのだ。代償は余りにも大きい。
そして、今その代償を支払わされるハメになった。


なんのことはない。
人間は、感情のうねりには勝てないのだよ。
合理性が欠けていようとも、だ。


感情が理屈を超えてしまうのはよくあることである。
全体を考えると理屈を通したほうが利益になるはず。
特に全体主義である日本では理屈が通りやすくてもおかしくはないのではないか。
もっとも、そう思ってしまうのが、すでに理屈に囚われている証拠なのだが。


少し本論から外れるが、ちょっとした例え話をしたいと思う。
飽くまで例え話であり、行動原理と理解いただきたい。


○大は小を兼ねない
予防接種が効果的だからと効能を示し、効果が出ていることを示して導入に邁進した人。
予防接種の所為で障害が発生したと、一部の例を碌に検証せずに紹介し、予防接種を縮小に追い込んだ人。
結果は、予防接種を受けないことによって、助かるはずだった人が罹患して助からずに亡くなられたりした。


同じような薬の話。
服用したことで奇行を起こすとの話が広まり、処方を中止した。
それによって、本来なら薬を処方すれば助かった命を失うハメになってしまった。


どちらも、本当に幾許かのくらいの副作用があったとしても、トータルでその何十倍もの命を救えるならそれは合理的ではないだろうか。
しかし、外的要因による副作用が出ることは、自然に罹患するであろう病気よりも忌むべき事態なのである。
例え病気自体が何倍も命を失わせる恐ろしい物であったとしても。


○食文化
異文化の食料に文句をつけるのは愚かしいことと考える。
特に、特定の品種だけ手をつけないということで生態系が偏る事態に陥るにも関わらず賢いから捕るなという。
理屈では感情を抑えることができない。事実震災を喜ぶ声すら聞こえてくる始末である。


○自粛と経済
被災の有無に関わらず、みんな生活を抱えている。
お金がないと暮らしてはいけない。
給与をもらわないといけない。


だから、お店、イベントの開催は必要なことである。
もちろん、計画停電を避けるために極力節電を行うということは念頭に置きながら。


しかし、それでも中止せよ、自粛せよと唱える輩は多い。


パチンコ店やゲームセンターにも経営者や従業員の生活がある。
1週間ならともかく、1ヶ月、2ヶ月と運営しなかったら倒産、給与不支給などの憂き目にあう。
実際に、開催予定のイベントが中止になって倒産したイベント企業だってある。


色々な企業が健全に運営できるように、徐々に活動を再開していくべきこの時に、自粛を声高く叫ぶのは、日本中が不幸を分かち合えるように、お前も不幸になれと言っているのと同義である。
経済活動が縮小して、救援物資が届かなくなったら、被災者が困るという事実には目を向けないまま。


上に挙げた例え話のように、感情論が多数派の場合、論理は感情に勝てないと考えている。
よって、今回の件も感情に支配され、原発は廃止の道を歩まざるを得ないのではないかと踏んでいる。

展望

ということで、原子力発電所を置換するための代替エネルギーというのを考えていかなくてはならない。


ひとえに発電といっても、その仕組みにはさまざまなものがある。
火力、風力、水力(+揚水力)、地熱、太陽光、天然ガス、などなど。


色々な発電設備があるが、どれも完璧という訳ではなく、それぞれにメリット・デメリットがある。
よって一概には決められない。組み合わせて使用していくのが良いだろう。


○短期的な目標


短期的な目標として、可及的速やかに推進するべきと考えているのが1つある。
太陽光発電および蓄電用バッテリーだ。


太陽光発電は基本的に蓄電用バッテリーを併せ持つ事が多いのでセットで扱わせていただく。


まず太陽光発電にはさまざまなデメリットがある。

  • 太陽光発電は安定電力として工場の稼働などに使うには役者不足である
  • 天候や時間に左右される、雨空や夜に発電できない
  • 発電におけるコストが割高である


しかし、以下の点において、今夏には活躍が期待できる。


A.夏のピーク需要とマッチする点


電気は基本的に蓄積ができない。
大規模な蓄電施設を作成するのであれば、その費用で発電施設を作るほうが良いだろう。


そのため、一日で需要がピークを迎える時には足りない場合がある一方で、深夜電気は余っていたりする。
これは輪番停電が発生していた3月にも当てはまる話で、実際に朝の8時、9時台と夕方の18時、19時台がピークであり、停電もその時間を中心に発生していた。
冬場は暖房は炊飯などで使用される電気が大きなウェイトを占めているためである。


一方、夏のピークは13時、14時台である。
これは冷房に使用される電気である。


この13時、14時台には、太陽が顔を出しているので太陽光発電が可能である。
蓄電用バッテリーに蓄えておいた電力と、太陽光発で発生した電力を使えば、電力会社の負担は少なくて済む。
更に、留守にしている家庭では、発電した分を売電することによって、不足した電力を補うことに協力できる。


不安定な発電機構であることは先の通りだが、例えば曇っていたりすれば気温が下がるから、冷房が控えめになる。
つまり、ピーク需要の総量が下がるから、発電量は少なくても構わないという訳だ。


太陽光発電は夏のピーク需要に対する電力会社への依存を抑制する効果があるということである。


B.停電対応


残念ながら計画停電が避けれなかったという場合も出てくるだろう。
そんな時も、太陽光発電と蓄電池の電力で家庭をバックアップすることができる。
実際に、今回の震災で停電した家庭も太陽光発電を稼働させ、携帯電話の充電などに利用した例がある。
http://www.asahi.com/national/update/0322/TKY201103220099.html

太陽光発電システムは通常、接続する電力会社が停電すると、連動して止まってしまう。ただし、住宅用の多くには自立運転機能がついていて、停電後も、電力を専用コンセントから取り出すことが可能だ。京セラによると、現在、岩手・宮城の両県では被災者らが自ら自立運転に切り替えて、自宅の太陽光パネルで発電した電力でテレビを見たり、携帯電話の充電器に使ったりしている。携帯電話をこの方法で充電し、安否の連絡ができたケースもあった。

比較的短い時間で済めば、無停電で乗り切ることも不可能ではないかも知れない。


○中期的な目標


10年先、20年先の電力について、原発の代わりを担うならガスタービンが良いのではないかと思う。
さまざまな報道からメリット、デメリットを勘案した結果、かなりの期間を原発の代替として利用することが可能ではないかと考える。
テクノロジー : 日経電子版


次点で地熱発電かな。


この辺りは人によってメリット・デメリットの捉え方が異なるだろうから賛否あるだろうけど。
そもそも個人としての考えは、今でも原発を立てるべきと考えているくらいなので、推して知るべしという話。


後は、エコアイスと深夜電気温水器のハイブリット設備を用意してほしい。


夏はエコアイスとして稼働。深夜電力にて製氷し、日中の冷却に使用する。
冬は深夜電気温水器として稼働し、朝夕の暖房の一助にしたり、給湯に使用したりする。
そんな深夜電力による保温設備があれば、ピークタイムをずらすことができる。


○長期的な目標


10年くらい経てば喉元過ぎてちょっとは熱さを忘れている頃だろう。
そんなよこしまなことを本気で考えている。
何せ、戦後50年も経ったら、日本も核武装するべしって意見が散見されるようになったくらいだし。


もちろん、10年も経ったなら、より安全な原発の提案を出せるだろう。
研究者も、今回の一件を教訓に、より安全な原発を提案してくるだろう。


出してくるものが高速増殖炉だったりしたら勿論お話にならない。
最低でも軽水炉、あるいは高温ガス炉辺りが候補だろうか。


以下のエントリを確認した限りでは、高温ガス炉は軽水炉よりも安全を確保しやすいものに思える。
まだ机上の空論に近いものだろうから、実証実験にて実績が整うのを待ちたい。
404 Blog Not Found:原発萌えな私ですら、原発はオワコンと言わざるを得ない理由


逆に高速増殖炉はあと50年くらいは、現在のもんじゅクラスの実証実験は即刻辞めて、机上や小規模実験でもっと実績を積み重ねて欲しい。


同時にリモートで繊細な操作を行うことができるロボットの開発を進め、その両輪で回せるようにするべき。
高速増殖炉は人が近づけなくて後手後手に回るなんて事態も避けられるようになってから考えて欲しい。


舌をかみそうな名前を暫く言わなくて済むと、TVキャスターも喜ぶのではないかな。

おまけ

まぁ、そんな訳で原発廃止は已む無しと言ったところで、原発推進派には変わらない。
そもそも、色々と「深夜電気」を前提に話をしているが、深夜電気が余るのも基本的に原発が深夜も常時稼動しているから余っているのであり、代替エネルギー源で深夜電気を見込めるのは風力くらいであろう。


ということで、個人的には今からどうするべきだと考えていたかもおまけとして述べたい。
先に述べたように、原発鶏肋であると考えるが、その身とはどんなものだっただろうかという話である。


○旧世代のリプレイス


福島第一原発は、40年前のシロモノであり、耐久年数も30年だったため、既に10年足が出ているという話である。


40年前のマンションと考えたら、建築法の改定前で耐震設計も旧来の物。
建て直して新しいマンションに住みましょうと考えたくなるものではないだろうか。


特に、安全性を考えないといけない原発においては、新基準でより安全に設計し、最新の基準に準拠したものに置き換えていくべきだと考える。


福島第一原発よりも地震津波が酷かった女川原発が無事で、基準が低かった福島第一原発が今のような事態に至ったというのは紛れもない事実。


電化製品でも、コンピュータでも、建築物でも、新しいもののほうがより良いようにと開発しているのだから、耐久年数を超えた時点で使用停止するべきであったはずである。


東京電力の経営責任を問いたい部分も実にこの点に集約されている。


例えこのような震災が1000年に1度くらいの大規模なものであったのだとしても今後のために新基準で作った物だけにするべきである。
古いものをまだ動くからと大事に使っているのも美徳かも知れないが、安全には変えられない。